119 KBH所蔵 貴重本紹介 その21 「ギリシア語旧約聖書(70人訳 Septuaginta)」

蔵書番号986 蔵書場所 書架 A-1
発刊年度:2006年 発行地:ドイツ・シュトゥットガルト
訳:ドイツ聖書協会(Deutsche Bibelgselschsft) 

本書は紀元前3世紀~紀元前2世紀にかけて、エジプトの都市アレキサンドリアで、ヘブライ語からギリシア語に訳された旧約聖書であり、現存する最古の翻訳聖書の一つである。
伝説では72人のユダヤ教長老達によって訳されたとされるので通称70人訳(セプチュアギンタ)と呼ばれる。

正統ユダヤ教徒には啓示の書とは見做されていなかったが、ヘブライ語聖書を底本にしていたため、初代キリスト教徒からは啓示の書と見做なされていた。ユダヤ教徒は後のヤムニア会議(紀元1世紀末)で70人訳を排除し、ヘブライ語の24の文書(現在の旧約聖書39巻)を正典と決定した。

現在キリスト教徒が使っている旧約聖書は文書の配列こそ70人訳に従っているが、文書の内容はユダヤ教のヘブライ語聖書の内容と同じであって、70人訳聖書のテクストが底本ではない。

キリスト教徒は70人訳聖書のテクストを忘れがちであるが、初期キリスト教徒の旧約聖書は70人訳聖書のテクストであった。本書を参照してヨセフスはユダヤ史を執筆し、福音書の著者達は引用し、教父達は教義に取り入れた。

本書はギリシア語のテクストであるため、実際の読解には日本語訳が必要である。各文書はほぼ総て日本語に訳されているが、講談社学術文庫から出ている「七十人訳ギリシア語聖書」(秦剛平訳2017、¥3,150、文庫本サイズ)が、訳文が明解で取っ付きやすい。

ただし本書はモーセ五書(創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記)のみの翻訳である。
(聖書翻訳の歴史p15~18)(展示委員 池田憲廣)