125【KBH所蔵 貴重本】紹介その27「エルサレム聖書」
エルサレム聖書(The Jerusalem Bible/TJB)
訳:アメリカ教会協議会(National council of Church/NCC)
出版社:Darton, Longman & Todd(London)
発行年度:1966 蔵書番号:921 書架:ケース
本エルサレム聖書(TJB)の模範となったのはフランス語に訳された聖書である仏訳エルサレム聖書(仏:La Bible de Jerusalem/LBJ)である。このLBJはエルサレムにあるカトリック教会の修道会のひとつドミニコ会によって運営されている高等教育研究機関エルサレム・フランス聖書考古学学院のドミニコ会修道士たちによって原語から仏訳され、編纂されたものである。LBJの最初の出版は、43分冊形式で1945年から1955年までかけて行われた。最初の刊行から約10年後の1956年になって、この全体がLBJとして知られている、一冊の本の形にまとめられた。このとき、改訳も行われ、注釈も改訂・補足されている。TJBはカトリックの学者らによってLBJを模範として原語から英訳され、1966年に出版された。翻訳は動的等価訳という文法的正確さよりも原語の思想に重点を置いた訳となっている。また、今日では広く行われている、聖書批評学に基づく注釈や解釈がなされており、当時としては革新的であった。TJBは神学的な、信仰に基づいた書であると同時に、聖書の持つ文学的・詩的な側面も強調しており、それが文章にも反映されている。このことが、TJBの実用性を高め、カトリシズムの典礼で一般的に使われる聖書となった。なお、蛇足であるが、本TJBには面白い誤記がある。1966年刊行のTJBの初版において、詩篇第122篇第6節、“Pray for peace”(エルサレムのために平安を祈れ)という文が“Pay for peace”(エルサレムの平安のために払え)と誤植されている。
(聖書翻訳の歴史p.52~p.54、革新的聖書論考p.200~p.202 前号:当所(誤)→当初(正)展示委員 池田憲廣)