127【KBH所蔵 貴重本紹介】その29 グッドニューズバイブル(Good News Bible/GNB)

グッドニューズバイブル(Good News Bible/GNB)
通称:今日的英語版(Today’s English Version/TEV)
翻訳:アメリカ聖書協会(American Bible Society/ABS)
出版社:Thomas Nelson Publishers/New York)
出版年:1976 蔵書番号:171 書架:B-1

 「グッドニューズバイブル」(Good News Bible/GNB)は北米において、「今日的英語版」(Today’s English Version/TEV)と呼ばれている。本書は1966年に新約聖書が、1976年に旧約聖書が、1979年には外典を含む版がアメリカ聖書協会で翻訳・編集された。聖書学者のユージン・ナイダ(Eugene Nida)が主張した翻訳における「動的等価理論(Dynamic Equivalence)」(翻訳の際に逐語訳をするのでなく、訳文を提供する地域の言語・文化において理解し易い表現を用いる)が適用されている。ナイダがアメリカ聖書協会(ABS)の翻訳部長を務めた期間に翻訳された。こうした翻訳手法は第二次世界大戦以後、各国の聖書協会を通して英語以外の他の多くの言語へも応用されてきた。本書は世界教会協議会(World Council of Churches/WCC)が世界中で進めている各国語への聖書翻訳事業でも手本として参照され、日本キリスト教協議会(National Christian Council in Japan/NCC)にも強い影響を与えた。ナイダは1966年に日本でも講演を行なっており、日本聖書協会の「共同訳聖書」(1978)の翻訳ではこの影響があったといわれている。しかし「共同訳聖書」の翻訳文章は、「口語訳」やそれ以前の聖書翻訳文と比べると、朗読の際の語調面で違和感が大きく、教会の関係者から不評を買い、一般に受け入れられなかった。そのため日本聖書教会の方針が変更され、「共同訳」は「新共同訳聖書」に移行された。話をGNBにもどすと、神学用語である「贖(あがな)い(redemption)」は「私達は解放される(We are set free)」、「神の義(righteousness of God)」は「神が人々を正しい者とみなす方法(How God puts people right with himself)」などと、神学辞典に頼らずとも理解できるように訳されている。
(聖書翻訳の歴史p.55、革新的聖書論考p.202~p.204、展示委員 池田憲廣)