120 KBH所蔵 貴重本紹介 その22 「ネストレ・アーラント ギリシア語新約聖書 第28版」
(Nestle-Aland Novum Testamentum Graece Ed.28)蔵書番号 1050 蔵書場所 ケースP 発刊年度 2012年
発行地 ドイツ・シュトゥットガルト 発行所 ドイツ聖書協会(Deutsche Bibelgselschsft)
本書はできる限りオリジナルに近づけようとする意図をもって編集されたギリシア語新約聖書である。新約聖書のオリジナルは消失しており、無数の書写された写本が存在している。本書はそれら写本を比較検討し、更に最新の聖書学や歴史学の知識に基づいて校訂を行い、これを現在に至るまで継続している。その基本的な手法としては、できる限り多くの写本を収集し、一字一句比較検討する。次に異読が見られるものに関してはそれぞれの写本の成立時期や信頼性を考慮したうえでもっともオリジナルに近いと考えられるものを採用し、本文を確定していくというやり方である。「初版」(1898)はエベルハルト・ネストレ(Eberhard Nestle)、「13版」(1927)からは息子のエルヴィン(Erwin)、「21版」(1952)からはクルト及び妻のバーバラ・アーラント(Barbara&Kurt Aland)がこれを引き継いだ。現在「28版」(2012)が刊行されている。本シリーズはネストレ・アーラント「NA」の名で呼ばれるようになった。現在のNAシリーズは、新約聖書ギリシア語本文を探求する大型批評版(ECM:Editio Critica Maior)の成果を反映してテキストのアップデートがなされている。最新の「NA28」においては、公同書簡のECMが発行されたことを受けて、公同書簡が改訂されている。「NA」は微妙な箇所や意見の分かれる箇所については欄外にすべての異読の例と引用元の写本を示すというスタイルをとっている。このため、聖書研究や翻訳においては研究者がそれらの異読も参照にしながら最も適切と思えるものを選ぶことができるようになっている。このようなスタイルをとっていることによって「NA」は広く認められ、受け入れられている。
(聖書翻訳の歴史p26、p27) (展示委員 池田憲廣)