118 KBH所蔵 貴重本紹介 その20 「原文校訂による口語訳」日本語訳聖書【フランシスコ会聖書研究所訳】

蔵書番号973 書架E-4 発刊年度1958~2011年 東京 サンパウロ出版
フランシスコ会聖書研究所訳

本書はカトリック教会が刊行した「原文校訂による口語訳」日本語訳聖書である。詳細な注釈を付した分冊版が順次刊行され、その後合冊版が刊行された。日本語訳聖書としてカトリックの用いる聖書としては、この翻訳が出来る以前は、1910年に発行された文語訳のラゲ訳と、1964年に発行された口語訳のバルバロ訳があった。しかしこれらの日本語訳は、カトリック教会としての公認訳ではなくあくまで私訳・個人訳であり、内容的にもラテン語訳のウルガタを元にしたもので、旧約をヘブライ語から、新約をギリシア語からそれぞれ直接訳されていなかった。そこで1955年全国教区長会議においてカトリック公認の日本語訳聖書を作る事が決定され、1958年に最初の分冊版である「創世記」が出版された。旧約聖書の翻訳と並行して新約聖書の翻訳が行われ、1962年に新約聖書の分冊第1巻「マルコによる福音書」が出版された。1978年には新約聖書全巻の翻訳が完了し、1980年に新約聖書全巻を1冊にした合冊版が刊行された。2002年「エレミア書」の刊行をもって旧約聖書全巻の分冊版の刊行も終了した。そして2011年8月に、旧約聖書全巻・新約聖書全巻を1冊にした合冊版が刊行された。長年月にわたって修正が繰り返され、理解し易く、カトリック教徒の間で評判のよい訳となっている。ほぼ半世紀を費やすほどフランシスコ会訳の完成が遅れた理由としては、フランシスコ会聖書研究所の所長であったB.シュナイダーが共同訳聖書委員会の委員長となったのをはじめとしてカトリック側の多くの人材がほぼ同時期に始まった共同訳(新共同訳)のための作業に従事したことによる。  (「聖書翻訳の歴史」p192~p193)(展示委員 池田憲葊)