130【KBH所蔵 貴重本紹介】その32「ビブリア・ゲルマニカ ルター訳聖書1545」復刻版

(Biblia Gelmanica 1545 Die Heilige Schrift Nach Der Ubersetzung D.Martin Luthers)
その1 蔵書番号:189 出版年:1983 出版社:ドイツ聖書協会 Deutsche Bible Gesellscaft 出版地:Stuttgart 書架:B-3
(本書は1545年に刊行されたルター訳旧新約聖書の写真リプリント復刻版である。)

今回より数回、本図書室所蔵のドイツ語訳聖書の紹介を行う。ドイツ語訳聖書成立の経緯の説明として、本書「ビブリア・ゲルマニカ ルター訳聖書1545」が刊行された歴史的経緯を述べる。聖書のドイツ語訳は1466年にストラスブールで印刷されるなど、ルター以前にもあったが、歴史的にルター訳が重きをなしてきたので、実質的には旧新約ドイツ語聖書はルターによって、翻訳されたとみてよい。さて、ルター訳聖書翻訳の経緯は次の通りである。マインツ大司教アルブレヒトは、自身の借財による財政難から、ローマ教皇より贖宥状(しょくゆうじょう)の販売の許可を得た。贖宥状とは、本来罪人である人間は、自分の欲望のままに生きれば、死ぬと地獄へ行かねばならないが、この書状-免罪符とも言う-を購入することにより天国への道が開かれるというものである。その根拠としては、ローマ教皇は、キリストや聖徒達の積み上げてきた功徳の一部を引き出すことができ、その効力を贖宥状に持たせるとするものである。この販売根拠の理由付けは、苦闘の末、神の恩寵をパウロの書簡から再発見したルターにとって見逃せるものではなかった。そこでルターは、1517年、「95か条の提題」を発表、贖宥状販売に抗議した。当時ドイツは、それぞれ領地を支配していた世襲貴族と、それを束ねる神聖ローマ帝国によって支配体制が形成されていた。そこで、世襲貴族の選挙によって選ばれ、教皇と密接な利害関係をもつ神聖ローマ帝国皇帝カール5世は、ルターの抗議を放置できなくなり、帝国議会にルターを呼び出し、
抗議の撤回を求めることとなった。 (聖書翻訳の歴史p.59~67 展示委員 池田憲廣)