115 会員教会を訪ねて(40) カトリック夙川教会

カトリック夙川教会 〒662-0052 兵庫県西宮市霞町5-40 TEL 0798-22-1649

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1865年3月17日 長崎大浦天主堂でキリシタンが発見されて以来、日本人の信教の自由が徐々に回復してゆく中で、フランスから渡来した宣教師たちは神戸、大阪の外国人居留地を中心にミッション活動を始めていました。

彼らは月に一度、神戸と大阪を東と西に向かって徒歩で出発して夙川あたりで落ち合い、お互いの活動を報告しあって一日を過ごしたと云います。明治末から大正にかけて、大阪や神戸の市街地から離れた郊外住宅地が各地に造成されるのを見て、宣教師たちは次の新しい教会を阪神間に建てようと考えます。

1921年(大正10年)、パリ外国宣教会のブスケ神父は札場筋にあった20坪の家を借り、2階を聖堂にして11月に初ミサを捧げ、「聖なるロザリオの教会」と命名しました。これが夙川教会のはじまりです。2年後に神父は現在地に土地を購入し、神戸居留地にあった「悲しみの聖母教会」の旧建屋を移設して仮聖堂とし、本格的な聖堂の建設計画に取り組み始めました。

ヨゼフ梅木 省三氏の設計になるネオ・ゴシック様式の聖堂が1932年(昭和7年)4月に完成しました。新聖堂はブスケ神父が敬愛してやまなかった聖テレジアに献げられ、以後夙川教会は「幼きイエズスの聖テレジア教会」と呼ばれています。1945年から1963年まで大阪教区の臨時司教座聖堂としての役割を果たしました。

1995年(平成7年)1月の阪神淡路大震災で大きな被害を受けましたが、幸いにも倒壊を免れ、2012年(平成24年)9月には耐震・改修工事が完了し、夙川のシンボルとして壮観な外観とともに、美しいステンドグラスや鐘の音が人々に心の安らぎと祈りの場を提供しています。

祭壇奥のアルコーブに聖テレジア像が置かれ、右には聖テレジアと建堂当時の信徒の子どもたち、左にロザリオを手にした聖母子と聖ドミニコのステンドグラスが配されています。聖堂および鐘楼の歴史的、文化的な価値が評価され、2009年に「西宮市都市景観形成建築物」、2012年には「兵庫県景観形成重要建築物」に指定されました。

夙川にゆかりのカトリック作家としては遠藤 周作と須賀 敦子がいます。この教会は遠藤少年が母に連れられてキリスト教という西洋仕立てのぶかぶかの洋服を着せられるに至った場所として彼の作品にしばしば描かれ、遠藤文学の原点といわれています。須賀 敦子は小林聖心で洗礼を受けた後、一筋の道を求めてフランスへ旅立ちました。敦子の感性が共鳴したのはイタリアで、日伊の作家を相互に翻訳する忍耐強い仕事は文学における日伊の架け橋となりました。明晰・静謐・澄明なその文体は、古き良き夙川を彷彿とさせます。