136【KBH所蔵 貴重本紹介】その38「統一訳ドイツ語聖書」

(Die Bibel Einheits Ubersetzung Der Heilige Schrift)蔵書番号:191 出版年:1993 出版社:ドイツ聖書協会 Deutche Bibel Gesellschaft出版地:Stuttgart 書架:B-4
本書はドイツ、オーストリア、スイス等のドイツ語圏のローマ・カトリック教会が使う「統一訳旧新約聖書」である。統一(Einheit)訳となっているのは、カトリックとプロテスタントを統一した聖書という意味である。日本では共同訳がこれにあたる。
1960年代から1980年代にかけて、カトリック神学者を中心に一部プロテスタント神学者が参加して新たな聖書の翻訳が行われた。その結果、新約と詩編は、聖書の文章がほぼ統一された。そして新約は1975年、旧約は1980年に刊行された。しかし本聖書は、やはりカトリックの聖書であり、カトリック教会の公式の場でミサや祈りに用いられている。そして典礼使用を目的としているので、礼拝での朗読にふさわしい落ち着いた文体を保っている。
一例を人が神により義とされる根拠を示した章句(ローマ人への手紙3章28節)をみると、プロテスタントの代表的聖書であるルター訳では「律法の行いによるのではなく、ただ信仰のみによる」となっており、一方統一訳では「律法の行いとは無関係な信仰による」となっている。
ルターは「信仰のみ」と訳しているが(尤もこの「のみ」はルターが自分の理解を強調するため、付け加えた言葉でギリシア語本文にはない)、カトリックでは「のみ」とは訳していない。これは、カトリックでは「人が義とされる」条件に、「信仰」と共に「良い行い」が必要であると考えるからである。
「信仰」と「行い」を結ぶ「と」と言う接続詞はギリシア語で「カイ(kai)」であるから、プロテスタントは「のみ、のみ」であって、カトリックは「カイ、カイ」なのである。冗談に聞こえて申し訳ないが、この主張は500年を経た今日も平行線をたどっている。なお現在流通している統一訳聖書は2016年の改訂版である。
(「聖書翻訳の歴史」p.66~71 展示委員 池田憲廣)


