124 KBH所蔵 貴重本紹介 その26「改訂標準訳聖書」

改訂標準訳聖書(Revised Standard Version/RSV)
訳:アメリカ教会協議会(National council of Church/NCC)
出版社:Oxford University Press(London) 
発行年度:1952 蔵書番号:156 書架:B-1

シェークスピア時代の1611年に完成したジェームズ王欽定訳聖書は、文体が美しく、格調が高く、英文学上の最高の散文及び詩文体として人々から賞賛された。そのため、現代に至っても、文学、ことわざ等英語圏の文化の中に広く影響を保っている。

しかし、19世紀後半になると、聖書学の発達から17世紀にはわからなかった誤訳が発見され、また多くの単語の意味も変化してきたことから新たな訳の必要性が認識されるようになった。

そこで19世紀末になって、イギリスで大幅な改訂作業が行われ、1884年改訂訳聖書(Revised Version/RV)が刊行された。この作業はイギリスで行われ、アメリカの聖書学者も参加したが、その意見の多くは本文に取り入れられず、付録に記録されただけだった。そこでアメリカの聖書学者達はアメリカ標準訳聖書( American Standard Version/ASV)を1901年に刊行した。

これは実質的にRVのアメリカ版である。しかしこれらの訳はギリシア語のテキストを忠実に訳すことを目指し、文脈に関わりなく、ギリシア語の語順にこだわった。その結果、研究者には高い評価を受けたが、一般読者にはぎこちなく、なじめない翻訳として受け止められた。

そこで読みやすい英訳聖書が求められるようになった。この求めに応じて登場した本RSVでは、これまで広く知られ、何年にもわたって用いられてきた英訳聖書の最良を保持する目的で改訂、刊行(1951)された。

本書では原書の語順を忠実になぞることを放棄し、英語として自然な語順を優先した。また文脈に応じて同じ言葉でも言い換えを行った。

例えば原典ギリシア語のスプランクニゾマイをRVとASVでは同じ「同情(compassion)」と訳しているが。RSVでは「憐れみ(pity)」(マタイ18:27、20:34)と訳し、また「同情」(マタイ9:36、15:32)と訳し分けている。こうした配慮によってRSVは評価も高く、アメリカのプロテスタント教会で公式に用いられる聖書となった。そして当所の翻訳意図の通り世界的英訳聖書となった。特にRSVによって訳された「主の祈り」は現在多くの信者によって暗誦されている。

(聖書翻訳の歴史p.52、革新的聖書論考p.186~p.189 展示委員 池田憲廣)