117 KBH所蔵 貴重本紹介 その19「ショートバイブル新約篇及び旧約篇」

ショートバイブル新約篇及び旧約篇

蔵書番号304及び305 書架C-1 発刊年度1953及び1954年 東京 厳松堂書店
E.J.グッドピード、J.M.ポゥイススミス編、片山哲訳

本書はシカゴ大学出版部発行の「The Short Bible」の翻訳である、出版の経緯は、加来美知雄なる人物が夫人の遺品にあった「ショートバイブル」を読み、感激して、救われたことから、その出版を友人の片山哲に相談したことに始まる。
片山はキリスト教文化書刊行会を設けてこれを翻訳、刊行した。
「ショートバイブル」とされているのは聖書全文の翻訳ではなく、各書の特徴を捉えてその章及び節を抜粋していることによる。
本書の特色は聖書従来の順序を変えて、著されたとされる年代順に配列していることである。
例えば新約では「テサロニケ1、2」に始まり、「テトス」で終わっている。また旧約では324頁にまとめられ、より簡略化されている。また、新約、旧約ともに収録されていない書が数書含まれている。
訳者 片山 哲は吉田茂内閣の後を受け、戦後最初となった社会党政権(1948~1949)の首相である。政界を退いた後も平和憲法擁護運動、日中文化交流、世界平和運動に心を注いだ。ダグラス・マッカーサーは片山が首相になると、「歴史上、実に初めて日本は全生涯をキリスト教徒としてすごした指導者によって指導される」として片山を支持する声明を出している。

(「聖書翻訳の歴史」p.206・207及び「日本語聖書翻訳史」p.316~318参照)。(展示委員 池田憲廣)