124【編集後記】鎌野 直人師
第二次大戦後、数多くの日本語訳聖書が出版されました。その中で、未だに影響力があるのは、1954年から1955年にかけて出版された口語訳聖書でしょう。筆者も子どもの頃からこの翻訳を読んできましたから、未だに口語訳聖書の訳語でみことばを覚えています。
口語訳聖書が改訂標準訳聖書(RSV)からかなり影響を受けていることは意外と知られていないのかもしれません。たとえば、創世記4:8のカインとアベルの件で、カインがアベルに「さあ、野原へ行こう」と語った、と改訂標準訳聖書は訳しています。口語訳聖書も同様です。ところが、その後の日本語訳聖書ではカインが語ったこの内容は省略されています。
短い期間で一気に翻訳するために、口語訳聖書の翻訳者たちは、当時の最新の英訳聖書であった改訂標準訳聖書を参考にしたのではないか、と思われます。
聖書翻訳というのは、決して一つの国、言語に留まることなく、国際的に大きな影響を及ぼしているのです。
クリスチャンセンター
神戸バイブル・ハウス 理事
関西聖書神学校 校長
鎌野 直人師