KBH所蔵 貴重本紹介 その1:新約聖書の分冊

玄関ロビーの書架の引出Bの貴重本を紹介したいと思います。

ここには次の明治初期に刊行された新約聖書の分冊が展示されています。

  1. 蔵書番号15 新約聖書馬太傅 1887(明治20)年
  2. 蔵書番号16 新約聖書哥林多前書 1879(明治12)年
  3. 蔵書番号31 志とぎやうでん 1877(明治10)年
  4. 蔵書番号35 新約聖書路加傅全 1876(明治9)年
  5. 蔵書番号36 新約聖書約翰傅 1877(明治10)年

これらの本が刊行された経緯は次の通りです。

1872(明治5)年、第一回宣教師会議が横浜のヘボン宅で開かれ、プロテスタント各派ミッション代表者らにより、権威ある日本語訳聖書の出版を企画しました。それは、個人的な訳業を離れ、共同事業による新約聖書の翻訳を行おうとするものでした。1874(明治7)年、これら海外の宣教師による新約聖書の共同翻訳事業として「翻訳委員社中」が発足し、翻訳事業が開始されました。底本にはジェームズ王欽定訳聖書、ギリシア語原本としてエラスムスの「テキストゥス・レセプトゥス」及びブリッジマン・カルバートソン訳の漢訳聖書が用いられました。実際に翻訳にあたったのはJ.C.ヘボン、S.R.ブラウン、D.C.グリーンで、松山高吉、高橋五郎、奥野正綱ら日本人が補佐しました。1875(明治8)年のルカ福音書を皮切りに、分冊の形で刊行され、1879(明治12)年に終了しました。今読んでみても、リズム感のある平易な日本文になっています。