KBH所蔵貴重本紹介_その16 旧約聖書伝 小嶋準治訳
蔵書番号18 1883(明治16)年刊 和装 竜章堂 大阪 ケースC
本書は通俗的聖書物語で、著者の小嶋 準治は高知出身の大阪のカトリック伝道士です。原本はイグナス・シュステルの「聖書史」(1848年刊)の漢訳本から訳したと思われます。
全文は88章に分けられ、創世記、出エジプト記、申命記、志士記、サムエル記、箴言、ダニエル記、イザヤ書その他の預言書から自由に抄訳されており、メシア出現までの旧約の歴史が編纂されています。たんに児童用の興味ある物語を抄訳したものではなく、忠実に旧約を訳した部分も少なくありません。
明治初期においては、カトリックは直接聖書を和訳していなかったので、カトリック出版物として、本書は「ごばつしよ 後婆通志与」(ゴパッショ御受難の意)に次いで注目されるものです。
「後婆通志与」は明治初期の禁教時代、カトリック司教のプティジァン准(Bernard T Petitjean 1829~1884)がキリストの受難を4福音書から抜粋して和訳したもので、1873(明治6)年に石版刷りで44頁で秘密出版されています。
また、小嶋 準治は「てんしゅじつぎ 天主実義」(りまとう 利瑪竇〈マテオ・リッチ〉著)も和訳しています。
(展示委員 池田憲廣)