KBH所蔵 貴重本紹介 その10 新約聖書の分冊

今回は引き出しBのガラスケースに陳列されている新約聖書の分冊類をご覧いただきます。

これらは和綴じの数冊の書物です。右から「新約聖書またいでん馬太傳」、「こりんと 哥林多前書」、「 るかでん路加傳真仮名全」、「よはね約翰傳」、「志とぎやうでん」と並んでいます。

これらは翻訳委員社中という明治初期のプロテスタント宣教師とその日本人協力者たちが共同で翻訳した新約聖書の分冊です。当時は新約聖書全体を一気に訳するのではなく、こうして一書ずつを訳して、完成したものから順にコルポーターと呼ばれる聖書頒布人が全国に販売していたのですね。今回は当時の彼らの翻訳の様子をご紹介したいと思います。

場所は横浜山手211番のアメリカ人宣教師S・R・ブラウン邸の一室。第1回は1874年に開催。社中のメンバーはブラウンの他、J・C・ヘボン、D・C・グリーン、日本人協力者は高橋五郎、松山高吉、奥野正綱、当時ブラウン邸で書生をしていた井深梶之助(後の明治学院の2代目総理)でした。

部屋の中央には大きな丸テーブルが置かれ、宣教師たちはそれぞれ、前回紹介した「エラスムス校訂ギリシア語〈ラテン語対訳〉新約聖書(Novum Instrumentum)」や欽定訳聖書が、日本人の前にはブリッジマン・カルバートソン訳など数種の訓点付き漢訳聖書や辞書、文法書等がおかれていました。作業は月~金曜日の間、週4回、午前9時~正午、午後2時~5時まで行っていたようです。〈以下次号へ〉

(展示委員 池田憲廣)