109号【巻頭言】日本基督教団牧師 白井 進 師
クリスチャンセンター 神戸バイブル・ハウス 理事
日本基督教団牧師
白井 進 師
主イエスの御降誕を祝い、救いの恵みが皆様の上に豊かにありますように、お祈り申し上げます。
神戸バイブルハウスの設立理念は、聖書の紹介と普及、幅広く福音宣教を行うことと記されています。新型コロナウイルスの流行により諸教会では、礼拝、ミサ、諸集会の実施に大きな困難がありました。しかし、「キリスト教の世界」セミナーで、講師が「振り返ると人類史上初めての、地域や民族や宗教を超えて、世界が一つになって祈る時だったのではないか」と言われたことが、強く印象に残りました。時が良くても悪くても福音を宣べ伝えなさいとの言葉が響いてきます。
さて、福音の中心は何でしょうか。神の愛は世界の全ての人に与えられるという良い知らせです。イエスが命をかけてこれを伝えてくださったと信じる時、人は救いへの道、「愛、喜び、平和、寛容…」(ガラテヤ5章22)の精神に立って歩み続けます。
プロテスタント神学者ディートリッヒ・ボンヘッファーは、「信仰者の務めは祈ること、正義を行うこと」であると語りました。正義とは「これらの最も小さい者に愛のわざを行う」(マタイ25章40)ことでしょう。ドイツのハイデルベルク大学で倫理学の教授であったエドゥアルト・テートは平和とは「窮乏、暴力、自由の制約、間違った認識、不安、罪責、権力行使、不正義、関係の断絶」のない状態として、9つの指標を挙げています。主イエスが「平和を実現する人々は、幸いである」(マタイ5章9)と教え、エルサレムに近づいた時、「もしこの日に、お前も平和への道をわきまえていたなら…」(ルカ19章42)と涙を流された時、どれだけ人々の苦悩に思いを馳せておられたでしょうか。
聖書は自己中心的に富や名誉への欲にとらわれている人々の心や魂を耕し、神に愛されていることへの感謝の応答として、他者の喜びを共に喜び、苦しみを自分のことのように苦しむことへとわたしたちを招いています。