KBH所蔵 貴重本紹介 その6 ベッテルハイム訳(馬太傅福音書・馬可傳福音書)

今回は、玄関ロビーのケースOに展示の貴重本を紹介いたします。
ベッテルハイムの翻訳した「マタイでん馬太傅福音書」と「マルコでん馬可傳福音書」です。

ベッテルハイム(はくとくれい伯徳令、Bernard Jean Bettelheim)は1811年ハンガリー生まれのユダヤ人でユダヤ教徒でした。イタリアの大学で医学を学び、軍医として働いていた時、イギリス聖公会の宣教師と出会い、キリスト教に改宗します。1840年洗礼を受けキリスト者となりました。1843年イギリス人エリザベス・メリーと結婚、国籍をイギリスに移します。

1845年琉球海軍伝道会(1843年設立、沖縄宣教を第一の目的として作られた団体)の沖縄派遣宣教師となります。1846(弘化3)年沖縄の那覇へ上陸。当時、琉球王国は薩摩藩の実質支配下(保護領)にあったので鎖国政策がとられ、ベッテルハイムの入国は拒否されましたが、熱心な交渉により、上陸を許可されました。

以後8年間、同地の波上山護国寺(真言宗)に住み、宣教と聖書翻訳を行いました。近代日本のプロテスタント宣教史は、ベッテルハイムにより沖縄で開始されたと言ってよいでしょう。

1855年、琉球語訳福音書、使徒言行録、ロマ書を完成します。
ベッテルハイム訳「琉球語聖書」(安政2年版)が、香港で出版されました。これは、ギュツラフ、S.W.ウィリアムス訳に続く三番目の日本語訳聖書です。

「琉球語聖書」(安政2年版)には、ルカ 路加伝福音書、ヨハネ 約翰伝福音書、聖差言行伝、保羅寄羅馬人(ロマ書)が収められており、本文は、漢字混じりの変体仮名の連続活字を用いています。また、沖縄を離れた後、アメリカに渡ったベッテルハイムは、シカゴで長老派教会の牧師を務め、ウィーン版琉球語聖書の翻訳を行いました。
彼の「ウィーン版」聖書(1873年オーストリアのウィーンで刊行)には、路加伝福音書、約翰伝福音書、使徒行伝(聖差言行伝)が収められており、本文には鉛活字が用いられています。

1858(安政5)年日米通商条約の締結後、再び日本伝道を志しますが、許可されませんでした。南北戦争に従軍後、1870(明治3)年、59歳で没しました。

ベッテルハイムは、日本伝道を志し、琉球において、日本最初のプロテスタントによる伝道を実施した人です。彼はペリー来航の折、同行して幕府との交渉にあたり、また日本で最初の種痘を行ったことでも知られています。

今回紹介する「馬太傳、馬可傳福音書」はどちらも文語体のこうほん 稿本(原稿)を復刻したもので、漢和対訳となっています。出版は新教出版社(東京)です。

2021.1(展示委員会 池田憲廣)