KBH所蔵 貴重本紹介 その12 ケセン語訳新約聖書 マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネによる福音書
医師として開業していた山浦玄嗣氏が、自分のふるさとの言葉で、ふるさとの仲間にイエス・キリストの福音を延べ伝えたいとの夢をかなえた本書は、氏が岩手県南部の気仙地方の言葉(ケセン語)で、訳した4福音書である。
医師として診療する傍らギリシャ語を本格的に学び、ライフワークの様に研究してこられたケセン語で訳された福音書である。
どの地域の人でもわかる共通語とは異なる発音をいかに表現するかについても、非常に苦労された労作である。
4福音書が分冊の形で発行され、それぞれに氏自身の朗読によるCDがセットになっている。
この様な形で聖書が訳され、少しでも人々が聖書に親しみを感じ福音にふれる働きは重要であるが、易しいことではない。訳者の非常な尽力に敬意を表する。
各巻限定3000部で発行されたが、大船渡の出版元が2011年の東日本大震災による津波の被害を受け在庫が流されてしまったことは惜しまれる。
この様な地味ではあるが重要な働きは人々が各地に日本で福音を告げるのに大きく資するものと思われる。(展示委員 高島恵)