134【KBH所蔵 貴重本紹介】その36「ルター訳 旧新約聖書1912」

(Die Heilige Schrift Die Bibel order Die Gganze Heilige Schrift des Alten und
Neuen Testament Nach Der Ubersetzung D. Martin Luthers)
蔵書番号:194 出版年:1912 出版社:ドイツ聖書研究所 Privileg. Wurtt. Bibelanstalt出版地:Stuttgart 書架:B-4
本書はルター訳聖書の第二次改訂版であって、現在用いられているルター訳聖書に至る過渡期の聖書である。現代の読者が普通に購入しているルター訳聖書は最初のルター訳ではなく現代訳された改訂版である。原初のルター訳は学者用の復刻版などによってでなければ見ることはできない。ドイツにおけるルター訳聖書の存在はあまりにも大きく、近代までルター訳はドイツ語訳聖書では圧倒的な独占的地位を占め続けてきた。ドイツ人はどの時代においてもルター訳聖書を読み、礼拝で用い続けてきた。
しかし、やがてルター訳を現代化せざるを得ない事情が生じてきた。まず、聖書学の進展により聖書の誤訳が目立つようになった。「正文批判」(発掘による、あるいはオリジナル言語の文法に関する新知見)の発達により、聖書の記述が正確性を欠くことが判明してきたのである。最初の現代化の試みは1861年であり、大がかりな改訂が試みられた。その結果1892年に第一次改訂版が発行された。しかし従来のルター訳の普及度合いや、その権威があまりにも大きかったため、おずおずとした改訂にしかならなかった。この改訂では不十分ということになり、すぐ改訂の作業が続けられた。この「正文批判」と共に、「正書法」(ドイツ語圏の学校教育や公の文書での正規の書き方)も無視できなくなった。
「正書法」に照らすと、従来のルター聖書はその基準から逸脱することになった。
もし、ルター聖書で用いられる文法に従って学生が試験等の解答をした場合、間違いと見なされるのである。こうしてルター聖書は、文法の点からも改正を迫られることとなった。1901年にベルリンで開かれた会議にもとづき、1903年から学校や官庁でこの正書法を使用することが義務づけられた。そして本書、第二次「改訂版」が発行された。しかし、この時期の「正文批判」の進歩は急速であったため、第二次世界大戦後まで改訂作業は続けられることになる。こうして一応完成した現代訳ルター聖書は新約1956年、旧約1964年であった。標題は「マルチン・ルターのドイツ語訳による」となっている。現在手に入るドイツ語訳ルター聖書はこの1984年版か、2017年版である。(「聖書翻訳の歴史」 p.68~75 展示委員 池田憲廣)


