138【KBH所蔵 貴重本紹介】 その40「オスティ訳フランス語聖書 La Bible Osty」
蔵書番号:206 出版年:1973 出版社:スイユ(Seuil)社 57 rue Gaston-Tessier, 75019 出版地:Paris 書架:B-5
本書は、カトリックの立場に立つフランス語訳の旧・新約聖書である。フランス人カトリック司祭エミール・オスティ(Emile Osty, 1887~1981)が原語から全巻を訳した旧・新約聖書である。作業には神学者ジョゼフ・トランケ(Joseph Trinquet 1919~2001)が主に旧約部分の訳に協力している。1970年前後に、スイス・サンモーリスのEditions Saint-Augustin社から旧約・新約が多数の小冊子として順次刊行されている。その後、1973年にフランス・パリのスイユ社から一冊または数巻にまとめた版が出て、フランス語の新しい標準訳の一つとして評価されている。ヘブライ語・ギリシア語の原文に忠実でありつつ、現代フランス語として読みやすい表現を心がけている。訳文だけでなく、各書に詳しい序文や注釈を付し、歴史的背景や文脈の理解を助ける構成になっている。基本的に一人の訳者と共同作業者による統一感のある文体が特徴。伝統的な教会フランス語よりも現代的で、学術的な厳密さと読みやすさのバランスを取ろうとしている。各書の冒頭に置かれた比較的まとまった「序論」では、由来、成立時期、資料関係、神学的テーマ、文学構造などを概説する。また、読み下し文中に付される脚注・欄外注では、原文語彙のニュアンス、異読、文脈上の問題箇所、他書との関連や神学的含意を簡潔に示す。オスティとトランケによる「introductions et notes」は、重要な批評的論点は押さえつつ、一般読者にも読める平易なフランス語で記述する。訳文と註が密接に対応し、註は短くてもペリコーペ(聖書の中のひとまとまりの本文箇所を指す、礼拝や朗読、注解で扱いやすい一区切り)の意味を読者に押さえさせるような設計になっている。註の重点は、近代批評学の詳細な議論よりも、原文のニュアンスと神学的メッセージを読者が追えるようにする点に置かれている。カトリック聖書学の成果を踏まえながらも、信仰的応用に偏りすぎないバランス型の注解となっている。しかし、そのため2,620ページの大部になっている。近年でも、この訳は「原典に即したフランス語訳であり、学問的かつ牧会的に配慮された注解を
提供している」と評価されている。
(「聖書翻訳の歴史」p.102~103 展示委員 池田憲廣)


