135【KBH所蔵 貴重本紹介】その37「メンゲ訳ドイツ語聖書」

(Die Heilige Schrift des Alten und Neuen Testament Nach Der Ubersetzung Herman Menge)蔵書番号:192 出版年:1994 出版社:ドイツ聖書協会 Deutche Bibel Gesellschaft 出版地:Stuttgart 書架:B-4

本書は古典文献学者ハーマン・メンゲ(Herman Menge 1841~1939)訳による旧・新約聖書である。メンゲはギムナジウム(文科高等学校)の校長として勤める傍ら、古代メソポタミアの地方言語、特に聖書関係の古代語の研究をしていた。引退後、言語学的素養を生かし、聖書の翻訳に取り組み、新約を1923年、旧約を1936年に私家版として出版した。彼は聖書翻訳への貢献により、1928年、ミュンスター大学神学部から名誉博士号を授与されている。彼の翻訳は原典の意味が不明な場合は複数の訳出の可能性を示唆し、また本文の取り扱いと翻訳が極めて綿密であった。こうした優れた特徴から国内で広く受け入れられ、ドイツ聖書協会が刊行を受け継ぐ。本書はその1994年版である。創世記31:19の記述によると、ヤコブは義父ラバンのもとから妻子と共に逃げ出すのだが、その際、ラバンの娘でヤコブの妻であるラケルは父の所有するテラフィムを盗み出す。このテラフィムは20cmほどの砂岩の像で家の守護神であると言われている。ヤコブ達を追いかけてきたラバンが言う。「なぜ、あなたは私の神を盗んだのか」。ラバンは必死になってこれを取り戻そうとした。しかしラケルは返さなかった。父の家の守護神など、何故ラケルは持ち出す必要があったのか。メンゲはテラフィムについて次のように述べている。「家の神または偶像。人々は吉凶を判断するためにそれに伺いを立てることがあった。人の形をした等身大のものもあれば、ずっと小さなものもあった(創世記31:34、サムエル記上19:13.16、士師記17:5)。メソポタミアで出土した文書によると、テラフィム像を持つことは家族の相続財産を得ることと関係があったと思われる。イスラエルではそのような慣習はなかったようだが、「裁き人」や王たちの時代にテラフィムが偶像崇拝に使われていた。ヨシヤ王が除き去った物の中にテラフィムも含まれていた(列王記下 23:24、ホセア書 3:4)」。家族の中で家のテラフィムを持つ者はその家の相続権を持つことを意味していた。ラケルは彼女の子供達のために父の遺産を確保しようとしたのだ。 (「聖書翻訳の歴史」p.66~71 展示委員 池田憲廣)